皆さんは病気になったとき、いろんな薬を飲みますね。
錠剤、液剤、粉薬、いろんな薬があります。
薬がなかった昔は、いろんな「薬草」を煎じて薬として使っていました。
いまでも多くの薬草が「漢方薬」として使われています。
どうして「草」なのに薬として効いているのでしょうか?
それは、薬草の中に含まれる生物活性物質(二次代謝産物)のためなのです。
薬草を煎じると、生物活性物質が溶け出します。
これを飲むことで、この化合物が体にいろいろな効き目=生物活性を起こし、病気を治してくれるわけです。
では、どうして、「薬草」は、このように生物活性物質を作り出し、蓄えているのでしょうか?
薬草に限らず、陸上及び海中に生息する様々な生き物は、たくさんの有機化合物(二次代謝産物)を作り出しています。
それら有機化合物は、外敵から身を守るための「防御(毒性)物質」として、
他の植物の生長を妨げる「発芽抑制物質」として、
あるいはオスに求愛するための「誘引物質(フェロモン)」として
というように、その生物が厳しい環境の中で生き残るための術(すべ)として使われているということが分かってきました。
このような物質の中には、薬草にも見られるように私たちにとって薬になるモノや毒になるモノがたくさん含まれており、
医薬品開発のターゲットとして、研究・開発が続けられています。
私たちの研究室では、このような興味深い性質を持つ「生物由来の有機化合物」について、
①新たな生物活性物質を探索し、化学構造を決定し、
②医薬品の候補となる活性物質を合成し、(岡村・鬼束研)
③生物活性のより詳細なメカニズムの解明を行っており、
最終的に抗がん剤などの医薬品のリード化合物を取れればと考えています。
①鹿児島産天然物由来の食中毒原因物質および解毒物質の探索
日本で2番目に南北に長い鹿児島県(約600km;ちなみに、1番目は東京都、3番目は沖縄県)は、暖温帯から亜熱帯の
生物が多種多様に生息しています。
また、高温・高無機塩環境という極限環境をもつ桜島近傍や冷温帯の一面も持つ屋久島などには、サツマハオリムシ
など多くの固有種・希少種も存在しています。
この自然環境における学問的・生物資源的な価値はとても高いです。
鹿児島に生息する生物種の中には、伝承的に食中毒を引き起こすもの、また逆に解毒するものが数多く報告されてい
ますが、その化学的生物学的研究については断続的にしか行われてきませんでした。
そこで、食の安全、地域振興への貢献、および天然資源の有効利用を目的として、申請者が培ってきた天然物化学的手法
を用いて、鹿児島県内の天然物由来の食中毒原因物質および解毒物質の探索、そしてそれらの化学構造や作用機序の
解明をおこなっています。
具体的には、次の( I )から( III )の3つの研究テーマを中心に研究を進めています。
( I ) 鹿児島産天然物由来のシガテラ解毒物質の探索・構造決定・作用機序解明
( II ) 鹿児島産紅藻由来の食中毒原因物質の単離・構造決定
( III ) 紫尾山麓に群生するトレマ(Trema)属植物由来の黒毛和牛食中毒死原因物質の探索
②鹿児島産(+マレーシア産)天然物由来の生物活性物質の探索
鹿児島市周辺には、鹿児島(南九州)特有の天然毒や病気について深く研究している研究機関が集中しており、共同でそれらの
研究ができる環境にあります。
南九州、特に鹿児島県に患者の多い成人T細胞白血病(ATL)については、鹿児島大学医歯学総合研究科などで最先端の研究が
展開されています。
その環境下において、大学院医歯学総合研究科や鹿児島県中央家畜保健衛生所などと共同研究を行い、新規治療薬の開発研究を進めています。
具体的には、次の( I )から( III )の3つの研究テーマを中心に研究を進めています。
( IV ) 成人T細胞白血病(ATL)の予防・治療を目的とした抗がん性天然有機化合物の探索
( V ) 核小体ストレスを標的とした抗がん性天然有機化合物の探索
( VI ) 鹿児島産植物、およびマレーシア産海綿、鹿児島産海綿などの天然物由来の有用物質の探索
濵田 季之
〒890-0065 鹿児島県鹿児島市郡元1-21-35 鹿児島大学理学部2号館207号室
e-mail: thamada@sci.kagoshima-u.ac.jp
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